思いがけずロマンチック
「昨日は申し訳ありませんでした、やっぱり、クリーニング代をお支払いさせてください」
もう一度、謝罪の気持ちを込めて頭を下げた。嫌味を言われるぐらいなら、スッキリさせておかないと私の気が収まらない。
「要らないと言ったはずだ、いいから頭を上げろ」
荒っぽく息を吐いたすぐ後に、聴こえてきた有田さんの声には僅かな焦り。私が謝るとは想定外だったのかもしれない。
しつこいかもしれないけれど悪いのは私。あやふやでは終わらせたくないし、自分自身が納得できない。
「いいえ、きちんと……」
言いかけたところで肩を掴まれた。
いつの間にか有田さんは目の前に居て、険しい顔で私を睨んでいる。しかも思わぬ至近距離だったから、不覚にも怯んでしまった。
「もうその話は終わりだ、今後一切口に出すな」
彼の声は表情に負けないほど鋭さを帯びている。
「はい……」
絞り出した声は掠れてしまったけど、有田さんは納得したらしい。険しかった表情を緩ませて小さく頷く。
「よし、それより頼みたい仕事がある」
肩から手が離れる瞬間、ふと笑みがこぼれたように見えた。