思いがけずロマンチック
「莉子ちゃん、また何かあった? すごく不機嫌だけど?」
「いいえ、面倒な仕事を押し付けられただけで……とくに何にも言われてないです」
何にも言われてないのに、イライラするのは仕事のせい?
それとも、有田さんがエラそうだからかもしれない。役員室での有田さんの行動と上から目線の顔を思い出したら、もやもやした気持ちが込み上げてくる。
そして会社を再建するためとはいえ、一方的に納得できない規則を押し付けられていいものか。潰れた会社の社員でも、個人として尊重してほしい。
「莉子ちゃん、あまり抗議してたら余計な仕事を押し付けられるかもしれないよ?」
千夏さんがくすっと笑った。
「大丈夫です、理由もない規則を押し付けられて、違反したら即クビなんて許せません」
「相変わらず、莉子ちゃんは負けん気が強いね」
また言われた。これで何度目だろう。
千夏さんだけでなく、今までいろな人から言われてきた。もちろん自覚してるのだけれど、小さい頃からの性格だから今さら変えようと思って簡単に変えられるものでもない。