思いがけずロマンチック
「すみません、妥協したくないんです。それに禁止されたら千夏さんたちが困るし、私も困ります」
「ありがとう、だけど秘密の社内恋愛なんてスリリングかもね」
さっきとは一変、千夏さんが意味深な笑みを浮かべる。
「え? 何言ってるんですか?」
「だって、校則でも禁止って言われると破りたくなるでしょう? 私も高校の時はいろいろ破ってたなあ……」
とか言って、余裕っぽい千夏さん。
校則違反なら罰として草抜き程度で済んだけど、今回は訳が違う。即クビだと言ってるのに、そんなに余裕に構えていられないでしょう。
「千夏さん、ダメですよ。まだ誰にもバレてないからいいですけど、本当にクビになったらどうするんですか?」
「きっと脅しだよ、大袈裟に言ってるだけ。さすがにそこまではしないんじゃない? それに私たちの他にも居るしね」
「居ますけど、私がちゃんと理由を聞いて、撤回させるまでは気をつけてくださいね」
「ありがとう、莉子ちゃんには本当に感謝してる。だけど無理しないでね」
当初の怒りはどこへ行ってしまったのか、千夏さんは声を弾ませる。何にもなければいいけれど……と私の方が心配になってしまう。