思いがけずロマンチック

益子課長はずっと以前、千夏さんに好意を抱いていたらしい。家庭があるというのに、千夏さんに何度もアタックした結果はもちろん玉砕。
しつこく益子課長に言い寄られて困っているところを、織部さんが助けてくれたそうだ。


だから尚更、千夏さんは総務課への異動を拒んだ。


二人の交際のきっかけが、まさか自分だったとは益子課長も知らないだろう。
社内でも二人の交際は知られていないし、私だって最近まで知らなかった。これまで上手く隠し通してきたというのに、よりによって一番見つかりたくない人に見つかってしまうとは運が悪かったとしか言いようがない。

どうして、ショッピングモールなんかに行ったんだろう。今すぐにでも二人を責めたい気分になってきた。


「社内恋愛禁止って言われてるのに、どうしたらいいと思う?」

「人違いじゃないんですか?」

「見間違ったりしないよ、織部君と……美濃さんだった、仲良さそうに腕を組んでフードコートに入っていったんだよ」


モニターの影から現れた益子課長の顔には、苛立ちと怒りが入り混じっている。織部さんが千夏さんを奪ったとでも思っているのだろうか。いや、まだ千夏さんを諦めきれていないのかもしれない。

どちらにしろ、非常にヤバい状況。





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