思いがけずロマンチック

「社内恋愛を禁止する理由は何ですか? 飲食禁止の理由はわかりましたが、社内恋愛を禁止する理由がわかりません」


苛立ちがつい口調に現れてしまう。
ゆるりと振り向いた有田さんが口角を上げて、少しだけ笑ったように見えた。

いや、単なる気のせいかもしれない。大きく息を吐いて、私を見据える目が怖い。
怒っているようにも呆れているようにも見える。


「業務効率の向上のため、余計なトラブルを事前に防ぐためだ」


きっぱりと言い切ってくれたけれど、よくわからない。業務効率なんて言っても仕事中は仕事のことしか考えていないから、恋愛とは無関係ではないのか。


「トラブルって、何ですか? 今まで社内では、そんなこと聞いたことありませんけど?」

「君が知らないだけだ、恋愛には三角関係や浮気は付き物、それらが社内で起こったら……どうだ? わかるだろう?」


確かに言ってることは理解できる。
だけど悪い方に考えすぎではないのかと思ってしまう。三角関係や浮気などの泥沼劇は、そう頻繁に起こるものではないだろう。


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