思いがけずロマンチック

「こんな小さな会社で、そのようなトラブルは起こることはないと思います、社員を見て頂ければわかります」

「起こらないとは言い切れない」


有田さんがぴしゃりと言い放つ。
頭ごなしに否定しようとするけれど、そんなことで屈する私ではない。苛立ちとともに、さらに対抗心が湧き上がる。


「100パーセントではないかもしれませんが、確率は限りなく低いと思います、それに恋愛なんて個人の自由ではないですか?」


有田さんに負けないぐらい力を込めて言い放った。自分でも言い過ぎたと思うほど。

だけど言いたいことは言わなければ気が済まない。伝えるべきことは言葉にして、きちんとわかってもらわなければ。


有田さんは言い返すこともなく険しい表情のまま、顔色を変えずに私を見ている。どうやって私を丸めこもうかと考えているのだろうか。


「ここは会社だ、社員を纏めるには規則が必要だ、何でも自由にはさせられない」


さっきとは一変して感情を押し殺すような低い声。視線を逸らしたと思ったら、暗い事務所を見渡して息を吐く。

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