思いがけずロマンチック
3. 王子様と秘密のミッション
新経営責任者さんは、断固として社内恋愛禁止令を取り消すつもりはないらしい。
だけど、私は引き下がれない。
恋愛するのは自由だと思うし、誰かに指図されるようなものでもない。会社の規則で禁止するなんて、破ったら即刻クビなんて絶対に変だ。
この規則がある限り、千夏さんと織部さんは堂々と付き合うことも結婚することもできない。
千夏さんと織部さんのためにも、なんとしても撤回してもらわなければ。
「千夏さん、すみません。きっと有田さんに規則を撤回してもらえるように、訴えてみますから待っててください」
「ありがとう、でも無理しないでね、目をつけられたら面倒だから」
千夏さんが声を潜めて、休憩室を見渡した。
新たな社内規則のおかげで昼休みの休憩室はごった返している。飲食は休憩室だけに限られているから、自席で昼食を摂っていた人が休憩室に集まってきている。
皆が黙々と食べる中、私は千夏さんに昨日の出来事を話した。
もちろんできるだけ小声で、誰にも聴き取られたりしないように。幸か不幸か密告は推奨されていないけれど、壁に耳あり障子に目あり。誰が耳をそばだてているかわからない。