思いがけずロマンチック
そして有田さんに妙な事をされそうになった件は割愛。千夏さんに話したら、何かにつけて冷やかされてしまうかもしれない。
「私は大丈夫です、納得できないことを黙って鵜呑みにしなきゃいけないなんて絶対におかしいし、黙ってたら負けですから」
「莉子ちゃんは頼もしいね、でも、私は早く莉子ちゃんの彼氏の話を聞きたいなあ」
千夏さんがテーブルに肘をついて、にこりと目を細める。さらに身を乗り出して上目遣いで、私の返事を待っている。
きっと良い回答を求めてくれているのだろう。
「私の……ですか? まだ彼氏はできそうにないです」
「そうなんだ、莉子ちゃんはまだ若いから、今しかできないことを楽しむ方がいいね、私は来年には三十路だから」
がっかりした表情を僅かに覗かせた千夏さんだったけれど、すぐに笑顔を取り戻した。期待してくれていたのに、応えられなくて申し訳なくなる。
「千夏さんに幸せのお零れをもらって、早くいい人を見つけます、彼氏ができたら真っ先に報告しますね」
「待ってるよ、まずは莉子ちゃんがその気にならないとダメだよ」
まさにその通り。私自身が望まない限り、彼氏なんてできるはずない。