思いがけずロマンチック
ずっと負けん気を携えて働いてきた。女だからとなめられるものか、絶対に負けるものかと常に言い聞かせて。
営業職を希望したのは男性と対等に働いて、社会人として強くなりたかったから。男性が優位に立つのは入社前からわかっていたけれど、そんなイメージを払拭したかった。
おかげで気がついたら、仕事一筋の面白くない女になっていた。周りの友達は彼氏が居て、綺麗になっていくのに私だけ違う。
彼氏は要らないとは言わない。本心は私も素敵な男性に出会って恋をして、幸せになりたい。
だけど、今はまだいいや。
「ねえ、莉子ちゃん、有田さんって……よく見ると綺麗な顔してるよね、いつもむすっとしてるけど」
いきなり何を言い出すのかと思ったら、千夏さんの視線の先には有田さんがいた。休憩室内にある自販機を見つめて、何を買おうかと選んでいるらしい。
確かに千夏さんの言う通り、顔だけ見たらカッコいい人だと思う。現に黙っていたら王子様にも見えてしまうのだから。
但し、あの高慢な話し方と意地悪な態度さえなければ。
「そうですか? でも性格は悪そうですよ、やっぱり男の人は性格が良くないと……」
視線を戻すと、にやにやしながら千夏さんが私を見ていた。