思いがけずロマンチック
せっかくコーヒーを口へと運ぼうとしていたところを邪魔をしたせいか、有田さんは少しむっとした表情で口を開く。
「営業だ」
「営業ですか? 私と同じですね」
またもや同じだったから、つい声のトーンが上がってしまった。この過剰な反応が迷惑だったらしく、有田さんはいっそう不機嫌そうな顔になる。
「同じかもしれないが……この会社とは少し違う、当たり前だろうが今後統一していく必要があるだろう」
きっぱりと有田さんの口から放たれた『違う』という言葉は、会社のやり方に対するものではないだろう。私に対する意味合いの方が強いようにも思えたけれど、単なる被害妄想かしら。
「どういう所が違うんですか? この会社のやり方はまずいということですか?」
「いや、まずいとは言ってないが……同じ営業でも視点、いや重点の置き方が違っている」
有田さんの言い方は遠回しでわかりにくい。私を適当にあしらうために、わざと誤魔化そうとしているのではないかと疑ってしまう。