思いがけずロマンチック
「やはり、会社によって考え方や仕事のやり方に違いがあるんですね」
「それぞれに良い点も悪い点もある、どちらかに合わせるのではなくスムーズな仕事のやり方を考えていかなければ」
有田さんは力強く言って、唇を結んだ。
コーヒーの缶を握り締める手が震えて、力が込められているのがわかる。真剣な表情の有田さんを見ていたら、胸が締め付けられるような感覚が迫ってくる。
その後を追いかけるように込み上げてくるのは、たぶん期待感。
有田さんは、私たちの会社を本気で立て直そうとしてくれている。きっと立て直してくれるはずだ。
「有田さん、私に手伝えることがあったら何でも言ってください」
込み上げる思いが、口から溢れ出した。自分でも驚くほどの力強さと熱を伴って。
驚いたのは有田さんも同じだったようだ。固く結んでいた口を開いて、不思議そうに私を見ている。
「ありがとう、もちろん君には手伝ってもらうつもりだ、そのために秘書になってもらったんだから」
ふと有田さんの表情が緩んだのと同時に、柔らかな声が舞い降りた。