思いがけずロマンチック
踊り場から階段下へと転げ落ちる痛みを覚悟して目を閉じたら、男性の腕の中に収まっていた。
二人並んだら幅がいっぱいになる狭い階段で、真後ろにいた彼は落ちてきた私を受け止めるしかなかったのだろう。下手をすれば受け止めきれず、一緒に落ちていたかもしれない。
もし非情にも避けられていたら私は、階段を転げ落ちて床に叩きつけられていたに違いない。
そんな親切な男性に対して、競争心をむき出しにしていたなんて恥ずかしくて堪らない。
しかも王子様だとか、塔の上のお姫様だとか妄想も甚だしい。
男性は何にも言わず去ってしまったけれど未練なんてない。むしろ、その方がよかった。もしも本当に王子様なら、また会えるかもしれないなんて期待する気にもなれない。
もう二度と会いませんように。
助けてくれたことには感謝。