思いがけずロマンチック
4. 王子様と嵐の夜

翌日、無事に出来上がった企画書をチェックしてもらうために役員室へ。あわよくば再び食事にでも誘ってみようと様々な言葉を考えつつ、足取り軽くドアを叩いた。


ところが、なかなか返事が無い。
朝からずっと役員室に篭っているのはわかっているのに、どうしたんだろう。もう一度ドアを叩いて、返事を待たずにドアを開けた。


すると目に飛び込んだのは、織部さんと千夏さん。二人とも振り向きざまに目を見開いて、驚き方がただ事ではない。


そのまま固まってしまいそうな私に、有田さんのきつい声が投げ掛けられた。有田さんは織部さんと千夏さんの向こうから、険しい顔で私を睨んでいる。


きゅうっと全身に緊張が張り詰めていく。


「唐津さん、入っていいとは言っていないはずだ。早く出て行きなさい」

「すみません、失礼しました」



有田さんの視線に耐え切れず、深く頭を下げた。体を押し潰されてしまうような息苦しさと気持ち悪さに、顔を上げることができなくなる。


「もういい、企画書はあとで見せてもらうよ」


刺々しかった有田さんの声が、柔らかさを帯びた。恐る恐る顔を上げると、有田さんが小さく頷く。

もう一度、礼をして部屋を出た。
出て行く寸前に見えた織部さんと千夏さんの顔は、暗く曇っていた。



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