思いがけずロマンチック

「本当に気をつけてくださいよ、人目につくような場所に行ったりしないでくださいね」


散々考えた結果、そう言うしかなかった。
今回は疑惑をかけられただけで済んだけれど、もし次に見られたら……今度こそヤバい。


「わかった、ありがとう。だからこそ早く暴君をゲットしてね」


悶々として晴れない私に千夏さんが呼びかけた。すっかり緊張から解放されたような声で、自分の問題を私へとすり替えてしまう。


「あ……はい、食事に行く約束をしてもらいました」

「やったじゃない、いつ?」

「まだ日にちとか、具体的なことは決めてません」

「早く決めないと、うやむやにされるよ?」


と言う千夏さんは、さっき自分のことを話していた時よりも切迫感が感じられる。

確かに、うやむやにされる可能性もある。
あんな状況で無理矢理に取り付けた約束なんて、適当に出てきただけの言葉かもしれない。有田さん自身も忘れているかもしれない。


「来週笠間さんの所へ行くので、その時にちゃんと決めてきます」

「わかった、しっかりと頑張ってきてくれたまえ」


千夏さんに激励されて、闘志が湧いてきた。
きっと私はゲットしてみせる。



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