思いがけずロマンチック
決意を固めて、笠間さんに連絡した。
「笠間さん、最終確認の件ですが、ご都合はいかがですか?」
「来週か……金曜日でいい? お客さんの予定が入ってるから、5時以降でお願いしたいんだけどいいかな?」
あまりにも申し訳なさそうに言うから、私の方が恐縮してしまう。笠間さんも忙しいのだろう。地元のお客さんを大切にしているのがよくわかる。
「はい、もちろんです、行く前にこちらから連絡させて頂きますね」
「ありがとう、助かるよ。次も有田さんも一緒に来るの?」
「はい、次は私が説明させて頂きます」
「よかった、安心したよ、よろしくお願いします」
にこやかな笑顔が浮かんでくるような温かさの感じられる声。威圧感のある有田さんの話し方とは対照的だと思う。
そんなことを考えながら役員室へ。
ドアを開けると無愛想な顔を上げて「何の用だ」と眉をしかめる。
「笠間さんに連絡しました、来週の金曜日5時です」
「ちょうど良かった、食事はその日にしよう」
まさか有田さんから言われるとは思わなかったから、一瞬言葉を失くしてしまった。
「はい」と答えるのが精一杯。
「自分から言い出して忘れてたのか?」
「いいえ、ちゃんと覚えてます」
嫌味な口調を払いのけたつもりだったけれど、有田さんの澄ました顔を見たら悔しい。
だけど覚えていてくれたから許そう。