思いがけずロマンチック

あっという間に迎えた金曜日。

天気は夕方から明日にかけて下り坂、夜半には雨脚が強まって風も伴うらしい。だから久しぶりにお洒落してみようと思ったけれど、やめておくことにした。大した服なんて持っていないから助かったけれど。


笠間さんに電話を入れると予定を遅らせてほしいとのこと。約束の時間は、5時から6時に変更となってしまった。
遅くなっても有田さんは食事に行くと言ってくれたから安心して、いざ出発。ビルから出た途端に、雨が降ってきた。


「雨、降ってきましたね」

「そうだな、傘は持ってきたのか?」

「もちろんです、大雨って言ってましたから……有田さんは持って来なかったんですか?」


得意げに傘を広げて見せたけれど、有田さんの手に傘はない。

まさか、私の傘に一緒に入ろうと思ってる? これは願っても無いチャンス?
明るい前途を妄想したら、ドキドキしてきた。


「忘れたんだ、今朝はいい天気だっただろう? そこのコンビニで買っていく」

あっさり告げて、ほんの50メートルほど先のコンビニへと駆けて行く。雨が降っているというのに、気にも留めないで。

「待ってください、濡れますよ」


追いかけても間に合うはずもなく、有田さんはコンビニへと入ってしまった。きっと有田さんが雨男なんだろう。



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