先輩、私に恋を教えて下さい。




「もう時間ですね」


「そうね......」



名残惜しそうに呟く林先生の頭を、
朝比奈先輩は優しく撫でる。




撫でる手がするりと、
林先生の頬に行き着くと、




「美琴先生...」



朝比奈先輩の寂しそうな声が
ドア越しに微かに聞こえた。




そして、
二人は唇を重ね合わせた___




唇を離すと、
美琴先生は席を立ち、
私が居るドアの方へ向かってきた。



その事に気づいた私は、
とっさに廊下の物陰に隠れた。




美琴先生のヒールの音が遠くなっていくのを、確認して私はまた美術室のドアの前に立った。




ドアの中から覗く、
切なそうに、
でもどこか幸せそうな顔の朝比奈先輩。




少なからず朝比奈先輩の気持ちは、
本当に微妙だが分かる。



美琴先生には結婚相手がいて、
でも好きな人と過ごせるのは幸せで。


多分そんな気持ちなのだろう。




そこで私は、
心底、羨ましいと思った___




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