永遠の宝物
家に帰ると、ピアノの講師を

していた母も働きに

出ていても誰もいなかった。

久しぶりに鍵盤に手を触れる。

受験で慌しくこの部屋に

来ることも無かった。

指鳴らしに軽く弾いてみる。

ピアノは繊細で、

練習していない事が

すぐにばれてしまうほど

躓いた。



一息つくと、

彼と一緒に練習していた事が

昨日のように思い出される。

なぜ、

こんなにも気になるのか。

答えはすぐには

出てこなかった。



いや、恋だと

決め付けたくなかった

だけなのかもしれない。

子供の私には

その事を正当化する理由が無い。



まだ、15歳。

中途半端な年齢と、

大人になろうとする身体との

違和感が心を締め付ける。

いつになったら大人になれるの?






龍くん………






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