永遠の宝物
引っ越して1週間がたった休日

父の休みに合わせて

近所への挨拶回りを

する為付いていった。

本当なら

その日に挨拶を済ませる

べきなのだろうが、

忙しい父が作った時間は

引越しだけで

いっぱいいっぱいだった。

両隣と向いと裏。

1週間ぶりに父と手を繋ぎ、

後ろから廻って最後に

例のお隣にやってきた。

もうすぐ桜が咲く時期で、

午後の日差しは暖かく、

ピアノの調べが

心地よく耳に入る。








――――ピンポーン――――








父が押したインターホンの音と

共に凄く緊張したことを

覚えている。

ピアノの音が止むと、

ギュッと繋いだ手に

力を込め珍しく微笑んだ

父に頭を撫でられた。


< 2 / 19 >

この作品をシェア

pagetop