永遠の宝物
「お待たせしました。

 どちら様ですか?」

「隣に越してきた天田です。

 ご挨拶に伺ったのですが。」

「あぁ!

 ちょっとお待ち下さい。」


パタパタと

小走りに駆けて来る足音が

聞こえ、「ビタンッ!」と

大きな音が聞こえた。

扉の向こうで

何が起きたのだろうか………

思わず父と

目を合わせてしまった。


すると、

いつもの泣き声が

すぐ傍から聞こえた。

後からゆったりとした足音が

近付き、

ソプラノの声が

優しくあやしている様だった。



「すみません。」



そう言うのと同時に

ドアが開いて

中から細身の女性が出てきた。

その腕には頬を赤くして

涙を浮かべている

小さな女の子が

見下ろしていた。



「大丈夫でしたか?」



父は女の子に目を向けて

話しかけた。



「えぇ、落ち着きが無くて

 いつもこうなんです。」



柔らかく微笑んで、

女の子の瞳に溜まった雫を

そっと拭いながら答えた。

その後

父達が何を話しているのか

まったく頭に入らず、

女の子を

じっと見つめている

自分がいた。
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