【完】ぎゅっとしててね?
「付き合ってくれてありがと。送ってくよ」
「大丈夫だよ。あたしも楽しかったよ。お姉さんドライヤー待ってるんじゃない?」
「もう暗くなるから」
「んーと、じゃあお願いします」
ぺこりと頭をさげると、
「ははっ。素直」
って頭ポンポンされた。
慶太くんの手、おっきい。
慶太くんって、ちゃらいけど優しいよね。
ひょっとして、優しいからちゃらく見える?
うん、微妙。
慶太くんのこと、もっと知りたいかも。
「慶太くんって名字なんていうの?」
「名字?ひどー。いまさら?」
「だってクラス遠いし」
「桜木。桜木慶太」
「桜木ってカワイくていいね」
「ありがとう」
桜木慶太くん。優しいチャラ男?
帰国子女。イギリスじゃなくてアメリカ英語って藍ちゃんが言ってた。
夕日の中を歩いてく。
もうすぐ我が家に着くころ。
「芙祐ちゃん、今度花火行こうよ」
「いいよ。行こっか」
「弥生くんとは約束してないんだ?」
「なんでヤヨ?してないよー」
「そうなんだ。あ、浴衣がいい」
「慶太くんも浴衣なら着る」
「了解。じゃ、また連絡するから」
今日はありがと、って、人質の解放。
そうだ、ずっと荷物持ってもらってた。
「ありがとう。ばいびー」
「ははっ。なにそれ。ばいびー」
あ。慶太くん。ばいびーしてくれた。