【完】ぎゅっとしててね?
花火の打ち上げ時間が迫っているのもあって、いい場所なんか全然空いてない。


「あたしが遅刻したせいで、ごめんね」


「謝んないでよ。どこからでも見えるよ」


にこって笑いながら、空を指さす慶太くん。
心の広さ、ありがたや。



ノンビリ、空を見上げる。
ほのぼの。いいかんじ。


「こんなにゆっくり夏休み楽しめるのも、今年までだよね。来年は受験生だし」


「芙祐ちゃん勉強するの?意外」


「失礼なー。ちゃんとするよー、多分」



もうすぐ花火が始まる。
前も後ろも、両隣も人で溢れてきた。



「芙祐ちゃん、はぐれるよ」


慶太くんが左手を差し伸べてきた。
手。つなぐってこと?


慶太くんの濃紺の浴衣の袖。ぎゅっと掴んだ。

だって、手汗かくじゃん。恥ずかしいもんね。



「えー?そっち?まぁいいけど、はぐれないでね」


「うん。離さない」


「そうして」




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