【完】ぎゅっとしててね?
・・・・・・。
入学して、日本の高校生活にも慣れてきた高1の秋。
俺の通う英文科は女子が半数以上。男子の方が少ない。
「慶太くーん!」
語尾のハートが目に見えるような、女子たちの猫なで声。
何を媚び売ってるのかわかんないけど、正直、そういうのは飽き飽きしてた。
「この後みんなでカラオケいかない?」
「いいよ」
「やったぁーっ」
だけど、俺が頷けば女の子たちは喜ぶから。
「そういうのまんざらでもないっていうんじゃねえの?」
「あー。ばれた?」
クラスメイトの匠は、呆れたように俺を見る。
匠は小学生のころからずっと幼馴染に片思いしてるらしい。
たしか、名前は藍ちゃん。見たことはないけど隣の棟の普通科に通ってるそうな。
「慶太は本当に来る者拒まないよな」
「拒む必要もないから」
「彼女でも作って落ち着けよ」
「彼女ねー」
特定の彼女を作って何になる?
遊びたいならいろんな子と遊んだ方が、楽に決まってる。
女の子の独占欲ってすごいじゃん。
メール返してよ!とか、なにしてたの?とか、逐一報告するなんてやってらんないから。
報告、連絡、相談……の、ホウレンソウを守れっていうんだろ?
恋する女の子って……まるで社会人。
試しに付き合ってみても、幻滅して終わり。
だったらしばらくいっかなーって思うんだよね。