【完】ぎゅっとしててね?
大事な話の途中だったのに。


ヤヨは何考えてるんだろ。
わかんない、わかんない。


もー、考えるのやめた。



自転車を引きながらヤヨと正門まで歩く。気まずい沈黙だったから、抹茶チョコふたりで食べはじめた。


「…うま」


「でしょ。ビターテイスト。新発売」


「さすがミーハー」


「せんきゅ」



正門に差し掛かるとき。



「……やっちゃん!」



女の子の声。
その方向を見れば、セミロングのさらさらつやつや黒い髪。小柄で華奢な体。
ワンピースタイプの制服だ。
たしかお嬢様高校の制服だったような。


お目々パッチリ。白い肌、小さな赤い唇。正真正銘の美少女。



……この子、ヤヨの元カノだ。


麻里奈ちゃん。
ミラクル可愛いお人形さん。



「麻里奈。どうしたん?」


「…ちょっといいかな?」


控えめにあたしを見つめる目が。小動物のような目が……カワイー。



あ、見惚れてる場合じゃなかった。


「っと…、じゃあまたね。ばいびー」


自転車に乗って、手を振りながら二人を見たら

すっごいお似合い。


ヤヨの麻里奈ちゃんに話しかける落ち着いた雰囲気も、まるで現在進行形のカップルじゃん。



素敵な二人を見たのに。


……もや。
もやもや。
って、お腹の奥でざわめく気持ち。



なんだろう、この気持ち?





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