【完】ぎゅっとしててね?
♡
文化祭の前日。
授業は午前で終わり。
午後は焼きそばの準備で大忙しだった。
めっちゃ働いたからね、あたし。
「ヤヨちゃん、コレは?」
「それはやっといた。こっち頼むわ」
ヤヨはあたしの3倍働いてたけどね。
あたしのクラスは外が売り場になる。
みんなは外で準備中。
あたしは効率よくはやく帰れるように、こっそり中の片付けを先にしておくことにした。
ちょっと荒れ放題…?
藍ちゃん召喚しようかなって思ってたら、トントンって音がした。
音の先、教室のドアの方には、慶太くんがいた。
いつもその人影が視界に入ると、ドキンってなる。これって気のせいじゃないと思う。
「ひとり?手伝うよ」
「英文科は?準備終わったの?」
「うん。これ片付ければいい?」
「ありがとう」
床に乱雑に置かれたペンキ。
ひっくり返したら危ないなあ。
こんなのうちのクラスのリスクマネージャー、藍ちゃんが見たら絶対怒るよ。
そう思いながら持ち上げると
「それは俺がやるよ。芙祐ちゃん汚れたら困るでしょ」
そう言って、ペンキを片付けはじめた。
「体操服だもん、汚れても大丈夫だよ」
「いいから。甘えてよ」
にこって笑う、いつもの優しい笑顔。
慶太くんって、気遣いとか、ストレートでいつもわかりやすいよね。
思ったまま言葉にしてくれるから。
「ありがとう。ほんとに優しいよね」
だからあたしもそうするね。
ぜーんぶ、直球。
ちゃらいとか思うことあるし、勿論。
慣れてるからだとは思うけど。
悔しいけど…あたし多分、そういう直球、好き。結構スキ。
回りくどいのとか、
よくわかんないもん。