【完】ぎゅっとしててね?
焼きそばを作るのは男子の仕事。
あたしは「頑張れー」って、鉄板の熱で暑そうな男子をうちわでたまに煽いでる。
結構暇なの。
今日の仕事は金銭収受と、焼きそばを渡すだけだから。
誰でもできる簡単なオシゴトだよ。
しばらくすると、焼きそばの屋台には行列ができてきた。
呼び込みの皆が敏腕だからだね。みんなね、超やる気。
売上金で、焼き肉に行くんだって。
ビバ焼き肉。
「いらっしゃいませー」
って言い疲れてきた頃。
行列がいったん途切れて、藍ちゃんとスマホで記念撮影なんかしちゃって。
堂々と油断してたその時。
「サボんなよ」
その声は。
「ヤヨちゃんも写ー……らないね。いらっしゃいませ、ようこそです」
びっくりしちゃった。
だってヤヨが。
あの子と二人でいるんだもん。
麻里奈ちゃん。
ミラクル可愛い元カノちゃん。
「弥生、めちゃめちゃ可愛い子連れてんじゃん!!」
「何?!彼女?!」
思わず焼きそばを作ってた男子も大盛り上がりだよ。
「お前らうるさいって。麻里奈、一個食えるか?」
「うーん、半分でいいかも……」
ヤヨの少し後ろに立って、ヤヨを見つめる大きな瞳。
さらり艶めく黒髪。
オーラがきらきら。
「麻里奈ちゃんっていうんだ?!」
「弥生の彼女?!」
「あ。いや、違くて……」
麻里奈ちゃんの控えめな声。
おろおろして、一歩後ずさり。
可愛いーって男子部員の声はテンションマックス。
女のあたしから見ても
可愛すぎる。麻里奈ちゃん。