【完】ぎゅっとしててね?
「弥生くんさぁ、キスは駄目でしょ。付き合ってもないのに」
「お前に言われたくないんだけど」
「まぁ、確かにそうだけどね」
慶太くん、笑ってない。
睨んでる。
初めて見た……本気で怒ってる顔。
「……俺の彼女に手ぇ出さないで」
その低い声に、ぞくっとした。
「彼女……?芙祐が?」
ヤヨはあたしに目を向ける。
「うん。付き合ってる」
慶太くんはそう答えたけど、
「……」
ヤヨは何も言わない。
ぱちぱちと火の音。生徒たちの声。
あたしたちの静寂は消された。
ヤヨの視線は下に降りる。
ぎゅっと慶太くんに握りしめられているあたしの手を、みつめた。