【完】ぎゅっとしててね?
慶太くんがあたしに近づく。
全然、笑ってない。
目も、口も、なんにも。
「これからはその……そういうことがないようにするから」
アロンの香り。
鋭い視線。
怒ってても見惚れそうな、綺麗な目。
「すごい、その……反省して」「黙って」
ちゅ……っと軽く音を立てて、キスされた。
「本当に、油断も隙もない……」
至近距離で眉をしかめる。
呆れた顔。
……セクシー。とか。思っちゃった。今。
「顔赤いよ、芙祐ちゃん」
「……火のせいじゃないかな」
あたしが言い訳したら、やっと笑った。
「他の男なんか目に入らなくしてやろうかな」
ふっと笑う慶太くんの目。
その目はあたしを捉えて離さない。
どきどきと激しい鼓動の中。
「……覚悟しとけよ」
優しい低い声があたしの中に残った。