【完】ぎゅっとしててね?
4限、自習。

席替えしてから板書の邪魔で仕方ない、ひとつ前の席に座る、背の高いひと。
黒髪ふわふわで、崩したくなるうしろあたまさん。



「……ヤヨ」


シャーペンで、つんつん。



「なに」


「さっき見たの誰にも言わないでね……藍ちゃんたちにも」


「言わねえよ」


「よかった」



……。

あれ?
ヤヨが前を向き直さない。




「あとは、あれを克服だな」


「アレ?」



「貧乳問題」



「……なっ」


きゃべつ食べてるし。
体操してるし。
たまにサボるけど……


ていうか、


「ヤヨに言われたくないんだけど。ヤヨの方が貧乳のくせに」



「…はっ」



むかつくー、鼻で笑われた。
大人の階段のぼっちゃってるからって、なんて子なの。



でも、たしかに。


「ヤヨ、ちょっと耳かして」



「あ?」



耳を寄せるヤヨに質問。



「貧乳って、ダメ?」



「知らねえよ」



「そんなー」



「でも、あいつはワールドワイドだし……まぁ、がんばれば」



なに、その哀れみの目線。



そうだった、慶太くん。帰国子女だもん。
目標高すぎ、アメリカンサイズ……。




「ヤヨのばか」



「なんでだよ」





< 238 / 449 >

この作品をシェア

pagetop