【完】ぎゅっとしててね?
歓楽街のひとごみの中。
茶色い髪、背が高くて、ゆるーい雰囲気。
私の好きな、シンプルな服装。
小柄な女の子を抱きしめてたのか、ぱっと離れる瞬間が目に留まった。
思わず、足を止めた。
「……慶太くん?」
あたしの声に、ヤヨと藍は、あたしの視線の先を見つめた。
黒くて長い髪の小柄な女の子に手を振って、一人で別の道に歩いて行く。
どきんどきん、心臓が早まった。
「今、見た?抱きあってたの……。あの人と」
指差した手、震えてきた。
「え……見間違いじゃないの?」
見間違いじゃないよ。
ちゃんと見た。