【完】ぎゅっとしててね?
連れてこられたのは小さなお店の前。
慶太くんは茶色いドアに手をかけた。


――カランカラン。


軽い音を鳴らしながら、ドアを開ける。
薄暗い店内に、橙色の灯り。
ジャズが流れてる。煙草の匂い。ずらーっと棚に並ぶお酒……。



異世界。



「あれ?慶太どうした?って、女の子泣かせて~、やるねぇ」


ひげのおじさん。
ダンディ。でも涙でよくみえない。



「メグミと俺の関係を簡潔に言ってほしいんだけど」


「メグと?旧友だろ?幼馴染っていうには微妙か?」


「恋愛関係は?」


「あるわけねえだろ。いくら慶太でも俺が許さない」



って、話に割って入ったのは、まんまるのおじさん。



「この人、メグミの……さっきの女の子のお父さんだから」


「慶太まさかこんな可愛い子と付き合ってんのか?」


「そう。彼女」


「へー、やるじゃん」



お酒くさい……。



「メグミは重箱入り娘だから。彼氏なんかできた日にはこの父親に毒殺されるわ」


「まかせとけよー」


あたしでも知ってる製薬会社勤務らしい。


慶太くんの言ってたこと、全部本当らしい。


アメリカではバイバイの挨拶で抱きしめる、っていうかハグっていうのするらしい。


……全部あたしの勘違い、らしい。





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