【完】ぎゅっとしててね?
昼休み。毎週水曜日は芙祐ちゃんの作った一品が食べれる日。
今日は唐揚げ。
「……ちょっと焦げた」
笑いながら、食べる瞬間を緊張気味に見つめる芙祐ちゃん。
「うま」
「ほんと?」
「本当においしいよ。全部食べていいの?」
「食べて食べて。あたしは朝から失敗作を…ううん。なんでもない」
照れ笑い。可愛い芙祐ちゃん。
「いつもありがとう」
朝から俺のために時間をかけて、何度も何度も挑戦してくれて。
一番美味しくできたもの、食べさせてくれてるんでしょ?
お世辞抜きにおいしいよ。
それなのに、不安げに見つめる大きな瞳。健気。頑張り屋。
思わず髪を撫でたくなる。
それにさ、気づいてないふりしてるけど。
いつも食べやすいように考えてくれてるよね。ピック使ったあとにはウェットティッシュくれたりさ。
気配りだね。ほんと。
「芙祐ちゃんはいいお嫁さんになれるね」
「え?家事とか…お嫁さんのする仕事が一番できなそうだけど」
そういうことじゃないんだよ。
ほんの少し、距離を縮めて。
芙祐ちゃんを見つめた。
「お嫁さんにしてあげよっか」