【完】ぎゅっとしててね?







日曜日。
不定休な両親は家にいない。
姉貴たちも留守。



あー……。


なんだこれ、緊張する。


ただ女の子が家に来るだけなのに。



駅まで迎えに行くんだけど。
芙祐ちゃんが見えた瞬間、ドキッとした。



ネイビーのワンピース。小花柄。よく似合ってる。



ゆるく巻かれた茶色の長い髮が風に揺れて、それを抑える小さな手。白い肌。



大きな目を細めて笑う。



「お待たせ」って。
ぷっくりとしたピンク色の唇が艶めいた。



俺が見惚れていたら、首をかしげて、少し微笑む芙祐ちゃん。



「どうしたの?」


上目遣い。ずるいわ、この子。



「はー……」


「なんでため息つくの」



可愛すぎ。魂持ってかれるとこだった。



「行こうか」


って一応、平静を装う。



「うん。行く。たのしみー」



ちょこんと俺の腕を掴んで、芙祐ちゃんは歩き始めた。






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