【完】ぎゅっとしててね?
♡
日曜日。
不定休な両親は家にいない。
姉貴たちも留守。
あー……。
なんだこれ、緊張する。
ただ女の子が家に来るだけなのに。
駅まで迎えに行くんだけど。
芙祐ちゃんが見えた瞬間、ドキッとした。
ネイビーのワンピース。小花柄。よく似合ってる。
ゆるく巻かれた茶色の長い髮が風に揺れて、それを抑える小さな手。白い肌。
大きな目を細めて笑う。
「お待たせ」って。
ぷっくりとしたピンク色の唇が艶めいた。
俺が見惚れていたら、首をかしげて、少し微笑む芙祐ちゃん。
「どうしたの?」
上目遣い。ずるいわ、この子。
「はー……」
「なんでため息つくの」
可愛すぎ。魂持ってかれるとこだった。
「行こうか」
って一応、平静を装う。
「うん。行く。たのしみー」
ちょこんと俺の腕を掴んで、芙祐ちゃんは歩き始めた。