【完】ぎゅっとしててね?
しばらく寄り添って、DVDを観てた。
ううー、いいお話。
あたしがうるうる感動していると、



「はー。生殺し……」



慶太くんがそう呟いて、そっとあたしから離れた。



「どうしたの?」


「なんでもないよ」



苦笑いの慶太くん。
なんとなくだけど、嫌われた?


不安になってきたよ。
重かったかな。


だって、慶太くんだし。
超オオカミだったもん。
百戦錬磨のキスに、色気大魔神。
こーゆーの、絶対慣れてる。



「初めてっていうの、引いた?」


恐る恐る聞いてみた。


そしたら「全然」って即答。



「ほんとかなー」


「本当だって。なんでそのくらいで引くんだよ」



「だって慶太くんだからね」


「ヒド。むしろ嬉しかったけど?」


慶太くんは笑いながら、あたしのほっぺをムニっとつまんだ。



だからあたしも仕返しに、慶太くんのほっぺをムニッ。



「予約しとくわ」


「なにを」


「芙祐ちゃんのハジメテ」


慶太くんは口角をあげた。
余裕、ありげに。



「……。ばか」



「可愛」



"あたしのこと好きでいてくれてる"って一目でわかる、優しい目。


1回だけキスしてくれた。






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