【完】ぎゅっとしててね?



   ♡



「ってことで、未遂だったの」


「うーん……でも次があるよ」


昼休みに、藍とガールズトーク。
内容は勿論この前のお家デートでの失敗談。



ディープな話になるでしょ?
だから誰にも聞かれない裏庭をチョイスしたよ。


昨晩の雨でこのベンチにたどり着くまでの足場がとっても悪いからね。誰もいない。



「藍ちゃんも初めてはそうだった?」


「え?私は別に……ちょっと照れたけど」



ち。やはり大人か。



「今はねー、何にも考えないでしちゃえばよかったって思うんだよね」


「確かにね。次のハードルがお互い高そう。誘う側も誘われる側も」


「核心ついたね」


「ごめん」


あーあ。
なんで勢いにのっちゃえなかったんだろ。
あたしの馬鹿。



あの瞬間、頭の中にどーんって
”貧乳問題”って単語が降りてきたんだよね。



「……ヤヨのせいかも」


「弥生?なんで?」


ヤヨがそういうこと言うから。


うん、嘘。
あたしがチキンだっただけ。



ごめんヤヨちゃん、キミのせいじゃないからね。




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