【完】ぎゅっとしててね?
制服は全部泥まみれ。
下手なコントしてる場合じゃないんだけど。


……帰っていいかな。
でもあたしが帰ったら、一人で体操服姿になるヤヨが可哀想だよね。



しぶしぶ更衣室で体操服に着替えた。


「半袖寒い」


「長袖誰かに借りに行こ?」


置き体操服してたあたしが奇跡だったけど。
別のクラスまで借りに行く時間、ないよね。



キーンコーンカーンコーン……


アウト。
教室にはぎりぎり着いたけど。


ひざ掛けをかぶって切り抜けようかな。


あったか毛布にくるまってたら。


ぼふって。頭に何かふってきた。



「長袖。それ着とけよ」


「え?ヤヨちゃんは?」


「カーディガンはほとんど無事だったから」


半袖体操服の上に、キャメルのカーディガンを羽織ってる。
オプション、ちょっと泥付き。



「いいの?ださいよ?その格好」


「うるさい。黙って着ろ」


「ふふ。ありがとヤヨちゃん」



お言葉に甘えて、ヤヨの体操服の袖に手を通した。



……柔軟剤の匂い。
いい匂い。



「優しい子に育ったね」


「……うざ」



あ、照れた。




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