【完】ぎゅっとしててね?
熱と悪魔(SIDE弥生)
SIDE弥生
***
昨日、芙祐と泥まみれになったせいか。
朝から寒いし、頭痛いけど。
徒歩10分で着くような距離だし、学校まで歩く。
「弥生、おはよ」
藍だ。
いつも彼氏と登校してくるのに珍しい。
「おはよ。彼氏は?」
「風邪で休み。流行ってるよねー」
「おだいじに」
「ありがとう」
「はー…」
やっぱだるいな。
「どうしたの?なんかへこんでるの?」
「いや」
「また芙祐と何かあった?」
にやっと笑う。わかりやすく面白がるな。
残念ながら何にもねえよ。
「弥生も健気だよね、うんうん」
「なにがだよ」
「弥生かわいそうだからいいこと教えてあげようか」
歩きスマホしながら、俺をチラッと確認。
「何だよ」
「あんまり大きい声で言えない」
ちょっとこっち、って呼ばれて藍に近づいた。
「……芙祐ね、慶太くんと、未遂だって」
って耳打ちされた。
……未遂?
「できなかったんだって。よかったね」
「……」
いや、全然よくないけど。
何で朝からそんな話聞かなきゃなんねえんだよ…。
「あれ?弥生嬉しくないの?」
「もうなんか、そういう雰囲気になってることすら無理」
「だよね」
だよねって。
藍にまで芙祐の悪魔が乗り移ったんじゃねえの。
あー、頭いた。
「もちろん、つづきがあるよ」
藍がニヤリと口角をあげた。