【完】ぎゅっとしててね?
横断歩道を渡って。
ヤヨの元まで、ちょっと小走り。
だってあのワンちゃん、すぐ逃げそうなんだもん。



「くりぼっち?」


「うざ」


「さっきね、これ見つけたの」


「いきなりだな」


紙袋の中身、ガザゴソさがして。
あ、あったあった。



「冬休み開けたらヤヨと食べようかと思ったんだけどね、我慢できない」



期間限定、抹茶味のチョコクッキーだよ。


「超おいしそうじゃない?」


「うまそう。初めて見た」


「幻の復刻版だからね」


ヤヨ嬉しそう。
ホント好きだよね、抹茶のお菓子。



ひとくちパクリ。
思わずあたしたち、顔を見合わせちゃった。



「感動的においしいね」


「これどこに売ってんの?買ってこようかな」


ヤヨにもヒット。
よくやった、あたし。


美味しそうに食べるね。
素直なヤヨちゃん。
あたしが作ったわけじゃないけど、なんか嬉しいな。




「そうだ、ヤヨちゃんヤヨちゃん」



紙袋ガサゴソ。



「あった。ハイこれクリスマスプレゼント。景品でもらったワンコだよ」


「いらない物おしつけんな」


「失礼な」


可愛いからあげたいなって思ったのに。
無礼者め。



「こんなに可愛いのに。ヤヨのばか」



「てかイブなのに彼氏といなくていいのか?」



「慶太くんとは今日の夕方から遊ぶんだよ」



「へぇ」


「ヤヨは……」



もしかして、これから麻里奈ちゃんと会うのかな?



「なんだよ」


「ううん」


いいや。キョウミナシ。
全然ナシ!



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