【完】ぎゅっとしててね?
嫉妬と束縛(SIDE 慶太)
SIDE 慶太
***
弥生くん、殺したい。
5割以上は本音だよね。
冬休みが終わって、3学期が始まった途端。
毎日のように、芙祐ちゃんは弥生くんと居残り。クラス委員って普通、そんなに仕事ないでしょ。
芙祐ちゃんとこの担任を恨む。
いつも芙祐ちゃんの仕事が終わるまで、英文科で誰かと暇つぶししてから迎えに行く。
そのまま一緒に帰ってるんだけど。
今日はなんとなく早めに来てみた。
廊下で立ち聞きなんて、趣味の悪いことしてみたりして。
「だから四隅揃えろって。何百回言わせんだよ」
弥生くんのその言葉に、笑いながら舌をだす芙祐ちゃん。反抗的な笑み。
「うざ」
「あはは。ってヤヨだってコレ揃ってないじゃん」
「レベルが全然違うだろ」
「あー、ほらこれも。ちゃんと揃えないとダメでしょー」
「お前にだけは言われたくない」
ホッチキスただ留めるだけの単純作業を。
なんで2人はそんなに楽しそうに和気藹々とやってんの?
思わずため息がでるわ。
「ソレ、何個目?」
弥生くんが芙祐ちゃんの右手を指さした。
「指輪のこと?可愛いでしょ」
「全然。似合わねえ」
「いつからそんな生意気な子になったの」
べーって弥生くんに向けるその顔すら、可愛いから。やめて。
”ヤヨちゃん”
芙祐ちゃんの口から出るその名前も、本当にムカムカしてくる。
嫉妬とか。
束縛とか。
俺にはそういうの無縁だと思って生きてきたけど。
我慢、しようとは思うんだけど。
「芙祐ちゃん」
つい、呼んじゃったよ。
俺の声に、こっちを振り向いた、2人。
「慶太くん早いね。ごめんまだ終わってなくて」
「暇だから手伝いに来た」
「ありがとうー!助かる」
一緒にいるだけで顔をほころばせる芙祐ちゃんは、俺のことを間違いなく好きだし。
それ以上に、何を望むことがあるのか。
今までの恋愛では考えたこともなかったけど。
……全てを独占したいとか。
最近、そんな馬鹿みたいなことを考える。