【完】ぎゅっとしててね?



「……別れ話なら、俺授業戻るよ」



慶太くんはあたしから目を離さない。

ちっとも笑わない。冷たい視線。




「……別れ話?なんでそうなるの?」



「違うの?」



慶太くんの声はいつもより全然優しくなくて。
結構怒ってる。



「別れないよ。なんで別れるの。ヤヨのことはちゃんと断ったよ」



「……本当に?」



慶太くんに疑われてる。
そんなひどい女じゃないつもりなんだけどな。



「あたしは慶太くんが大好きだもん。別れないよ」



そう言い切ったとき。


慶太くんの表情は、徐々に緊張が解けていって。



「……なんだ、よかった」



にっこり安心したように笑った。




「びっくりした。突然あたしの手、ポイって捨てて離れるから」


「別に捨ててないって」



にこにこ、慶太くん。
あたし、この笑顔が大好きなんだ。





< 338 / 449 >

この作品をシェア

pagetop