【完】ぎゅっとしててね?
4*
言い訳(SIDE 弥生)
SIDE 弥生
***
「起立、礼」
誰かさんが教室に来ないから。
また俺が号令係。
今ラッキーなことにいつもより少し早く一限の授業が終わった。
芙祐はまだ教室に来ねえし。
気まずいからサボったんだろうけど。
サボった後、どうする気だよ。
教室に来るタイミング見失ってないか、あいつ。
大丈夫かな、とか。
心配になってきた。俺のせいだけど。
……でも今更、なかったことにはしないから。
2回目のキスをした瞬間。
人の彼女だろうが、何だろうが、悪いけどどうでもよくなった。
今まで真面目に生きてきたはずなんだけど。
全部あいつのせい。
「弥生どこ行くの?」
「芙祐のこと迎えに行ってくる」
藍にそう言ってから階段を下りて、とりあえず玄関の方に向かった。
「授業中に何してるんだ!」
突然廊下中に響いた、先生の怒鳴り声。
……芙祐だ。
あいつすげー怒られてね?
って、よく見たら桜木慶太も一緒に怒られてる。
……なんだ。
ふたりでいたのかよ。
予鈴が鳴って、二人が先生から解放されたから、
芙祐にばれないように教室に戻ろうと踵を返したとき。
「キスくらいであんなに言う?」
「まぁサボってたのがまずかったんでしょ。芙祐ちゃん大丈夫?」
「怒られ慣れてるよ」
「だと思うけど」
真剣にあいつ、悪魔だと思う。
俺が後ろの席ばっかり気にして、若干反省してた時間を返せ。