【完】ぎゅっとしててね?
隠せなかった想い(SIDE 慶太)
SIDE 慶太
***
放課後、芙祐ちゃんが俺の家に来た。
DVDを見終わった後、
エンドロールまで見入る芙祐ちゃん。
あんまり見つめすぎたかな。
芙祐ちゃんもこっちを向いて、ほほ笑んだ。
今……だれの事考えてる?
芙祐ちゃんと付き合ってから、勘が鋭くなった気がするんだよね。
芙祐ちゃんの心が揺れてることは、多分間違いない。
「慶太くん」
芙祐ちゃんは俺を見上げて、いたずらっぽく笑う。
俺の片手に指先を絡め、反対の手のひらで包んだ。
「好きだよ」だって。
芙祐ちゃんは真心を込めるように呟いた。
もうさ……心読んだでしょ。
なんてタイミング。
愛らしい横顔。長い睫は下を向く。
両手で包んだ俺の手を大切そうに抱きしめて。
思わず笑みがこぼれた。
……弱気になるなんて、バカだ。
俺のこと好きじゃん。芙祐ちゃんは。
芙祐ちゃんの握る手とは逆の腕で、彼女を抱きよせた。
「数学やんなくていいの?」
「あとまわし」
上目遣い。
芙祐ちゃんは甘ったるい目で俺を見つめる。
……わかってやってる?
芙祐ちゃん。
心拍数、どんどん上がっていってるんだけど。
「それよりもう一回、キスしたい」
ピンク色の唇は、追い打ちをかけるように、艶めかしく動いた。