【完】ぎゅっとしててね?
「やっだー。また女連れ込んで」



ゲバい20歳、女子大生の姉貴。次女。
一番人遣いと気性の荒い女。



「は…はじめまして」



ベッドに座り、体を覆う布団から恥ずかしそうに顔を出して、覗く芙祐ちゃん。
布団の端をぎゅっと握る両手が震えてる。



「何この子可愛いじゃん。本命?」



「まじで頭おかしいだろお前。頼むから出てって」



「慶太うるさい。可愛い子ちゃん、あとで下おいでよー」



ってわざとらしい投げキッス。きも。死ね。


うるさい姉貴をやっとの事でおいやって、



「まじでごめん……芙祐ちゃん」



「ううん、大丈夫……」



大丈夫じゃないよね。
まだ固まってる。

あ、動き出した。



「お姉さん美人だね」


そう言って、ブラウスの袖に手を通す。



「どこが。ほんとごめん。あいつ一番頭おかしいから」



「あはは」



芙祐ちゃん……愛想笑いやめて。
あーまじで、久々に帰って来れば、あいつは余計なことばっかりしやがって。



制服を着終えた芙祐ちゃんはお茶を一口飲んで、ため息をひとつついた。



そりゃため息もでるよな。
本当に…土下座もんだろ、これ。



沈黙の中、テレビの音だけが流れる。




「なんかやだ……」



芙祐ちゃんが突如つぶやいたその言葉に、ときが止まった。



「うん……ごめん」



弁解の余地もない。
最悪、あいつ。他人になりたい。



「違うよ?さっきのじゃなくて……いや、恥ずかしかったけど……そうじゃなくて」




芙祐ちゃんの顔が曇る。



「何?」



俺が隣に座ると、
斜め上を見上げるように、むっとした顔で俺を見た。



……うん、ごめん。その顔可愛い。




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