【完】ぎゅっとしててね?
「何?」
あたしが聞き返すと、その子は一歩、にじり寄る。
迫力増したよ。
「慶太がいんのになんで弥生にまで手え出してんの?」
「えー……」
あ、コレめんどくさい。
それってあなたとどう関係あるのかな。
「弥生も慶太もかわいそうじゃん。なんとか言いなよ」
「ナントカ」
って言ったら怒るだろうな。
あ、怒った。やばい。
「アンタまじでふざけんじゃねぇよ!」
って黒髪ロングの女子の手があたしに振り下ろされる寸前。
「何で喧嘩してんだよ」
って、ヤヨの右手が止めた。
その顔は。
どちらかといえば呆れてるね。
「だって…弥生もさぁ、たぶらかされてるのわかんないの?!」
「何に」
「この女に決まってんじゃん!!」
指さされて、睨まれる。
うん、多分。
あたしも悪い。
「ごめんなさい」
「何いきなり謝ってんだよ!」
「えぇ?」
困ったなぁ……。
ガチギレだよ。
「だいたいいっつもアンタはそうやって飄々と」
わお、あたしのこと結構知ってるんだ。
名前聞いちゃおうかな。
なんてのんきに考えてる間も、
良く動くお口に罵倒され続けてるんだよ。
「ちょっと聞いてんの!?」
ていうか、この子の暴走どうしよう。
「あのさ、悪いんだけど」
ってまた仲裁に入ったのはヤヨ。