【完】ぎゅっとしててね?
「……避けんの?」



そんな、
……切ない顔でみないでよ。


麻里奈ちゃんでも、そこらじゅうのヤヨファンでも。
ヤヨにはいっぱい相手がいるじゃん。



「うん」


頷くあたしに、ヤヨは言う。




「わかったけど、多分無理。俺お前のこと好きだし。話しかけたくなると思う」




まっすぐな目線も、まっすぐな言葉も。

あたしから聞こえる、
ドキドキ鳴る胸の音も。



全部いらないの。
気持ちめちゃくちゃにしないでよ。



どうしてわかってくれないの?




「ヤヨと付き合うことは一生ないから!」




しんとする廊下に、
思ったより大きくあたしの声が響いた。



言葉を失ったみたいに、ヤヨは動かない。


咄嗟に目をそらした。
無表情のヤヨ。傷つけた。絶対。




……こんなこと言いたかったんだっけ。




もう見れない。ヤヨの顔。





「……わかった。悪かったな」




ヤヨはようやく、小さな声でそう言って
あたしから離れていく。



大きい背中。
どんどん遠く、離れて……。




何やってるんだろう、あたし。


……ヒドイこと言った。
でもたぶん、そんなに間違ってない。



追いかけようか、今なら謝れば……。


違う。あたしの優柔不断。


もう、これでいいんだから。





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