【完】ぎゅっとしててね?

大嫌いな悪魔へ



SIDE 弥生

***



3月14日。
すれ違いざまに芙祐に言われた。



「おめでと」


目も合わせなくて、
もちろん笑いかけることもなく。



多分、俺が芙祐の誕生日を祝ったから。
義理と人情の「おめでと」なんだろ?



まじいらねえ。そういうの。



誕生日プレゼントにあげた抹茶クッキーは、ご丁寧に下駄箱に返品されてたし。



告るんじゃなかった。


こんな風になるなら、
他のあいつの元カレたちみたいに、適当に付き合われて、適当に縁切られたほうが数倍マシだった。




去年は、


『誕生日おめでとう、ヤヨちゃん』


俺の前の席に座りながら、
頭なでてきやがって。


『やめろ』


そういうと、いたずらっぽく笑って。



『照れ屋さん?』


にこにこ楽しそうに人をからかってきた。



もういっそその時のままでもよかったかも。



……もうやめようかな。



好きでいるの、バカらしい。


俺だって脈がないことくらい
とっくに気づいてる。さすがに。



あいつの鉄壁ガードくらうくらいなら


前の関係に戻りたいとか、そういう欲すら沸かなくなった。


ただのクラスメイトに格落ちしてもいい。



目が合いそうでそらされる日々に、もう十分心は折られた。




「……で?失恋完了?」



モグに会いに来た麻里奈は、玄関で満足そうに笑う。
本当の鬼。



「完了じゃね?もういい」



「じゃあ」



「だからってお前の斡旋する女とメールとかしないから」





女なんかしばらくいらねえよ。




< 397 / 449 >

この作品をシェア

pagetop