【完】ぎゅっとしててね?
大嫌いな悪魔へ
SIDE 弥生
***
3月14日。
すれ違いざまに芙祐に言われた。
「おめでと」
目も合わせなくて、
もちろん笑いかけることもなく。
多分、俺が芙祐の誕生日を祝ったから。
義理と人情の「おめでと」なんだろ?
まじいらねえ。そういうの。
誕生日プレゼントにあげた抹茶クッキーは、ご丁寧に下駄箱に返品されてたし。
告るんじゃなかった。
こんな風になるなら、
他のあいつの元カレたちみたいに、適当に付き合われて、適当に縁切られたほうが数倍マシだった。
去年は、
『誕生日おめでとう、ヤヨちゃん』
俺の前の席に座りながら、
頭なでてきやがって。
『やめろ』
そういうと、いたずらっぽく笑って。
『照れ屋さん?』
にこにこ楽しそうに人をからかってきた。
もういっそその時のままでもよかったかも。
……もうやめようかな。
好きでいるの、バカらしい。
俺だって脈がないことくらい
とっくに気づいてる。さすがに。
あいつの鉄壁ガードくらうくらいなら
前の関係に戻りたいとか、そういう欲すら沸かなくなった。
ただのクラスメイトに格落ちしてもいい。
目が合いそうでそらされる日々に、もう十分心は折られた。
「……で?失恋完了?」
モグに会いに来た麻里奈は、玄関で満足そうに笑う。
本当の鬼。
「完了じゃね?もういい」
「じゃあ」
「だからってお前の斡旋する女とメールとかしないから」
女なんかしばらくいらねえよ。