【完】ぎゅっとしててね?
歩くこと10分。
桜並木。
まだ桜は三分咲き。
ひとけナシ。
桜並木の真ん中で
慶太くんはあたしに向き合った。
「芙祐ちゃん今、誰のこと考えてる?」
「え?」
誰、って。
「やっぱいいや。言わないで」
慶太くんは”ごめんね”って笑う。
「よい、しょ。と」
道の真ん中で、あたしの両手をぐいっと引っ張った。
よろけたあたしは、ふんわりと抱きしめられた。
大きなカラダ。
大好きな両腕のぬくもり。
「芙祐ちゃんには俺がいるでしょ」
耳元で聞こえるのは落ち着いた声。
優しい、いつもの慶太くんの声。
……慶太くんは、いつだってあたしのことなんかオミトオシ。