【完】ぎゅっとしててね?
「慶太くんのことが大好きだよ」


慶太くんの胸にこもる声。


「ありがとね」


ははっ、っていつもみたいに笑う。



あたしは慶太くんを見上げた。

慶太くんもあたしのこと見てた。



……キス、してくれるかな。


ちょっと期待したけど、ここ外だし。
されなかった。




「桜全然咲いてないし、三食団子もまだだったね」


「でもなんか癒し系。桜ってあたしすきだなぁ」



そういえば慶太くんの苗字って桜木だよね。
桜の木で可愛い。


土屋ってそろそろ飽きたし。




「桜木芙祐になりたいなぁ」



「なに可愛いこと言ってんの」



慶太くんはあたしの手を引いて、歩き始めた。
今度は隣同士。


歩幅、ぴったり。




「坂木芙祐じゃなくていいの?」




”坂木”
その単語にフリーズした。


「「……」」



一瞬の沈黙。



「……さ。坂木とか、やだし」




多分、試された。今。



「うん」



満点には全く届かないあたしの反応。
でも慶太くんは、
にっこり笑って頷いた。



でもね
やっぱり、あたしの反応はダメだったみたい。



あたしだって、こんなに急じゃなかったら、
「坂木は嫌」とか即答できた、はず……。
ってコレは言い訳。




慶太くんは苦笑いした。
悲しそうな、苦笑い。




「……好きだよ。芙祐ちゃん」



残念なくらいストレートなあたしの髪をさらりと掬い、



「俺のもので居てよ」





切なげな笑顔、頭から離れなくなった。







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