【完】ぎゅっとしててね?
普通科からも英文科からも、
保健室前の廊下を通った方が生徒指導室に近いし、
普通はそっちを通る。
……鉢合わせしたくない。
いや、どうせ
指導室で会うんだけど。
うん、でも。
遠回りに決めた。
まっすぐ歩いて、ここを左……
「わっ」
曲がり角で、誰かにぶつかった。
「ごめんなさ……」
顔を上げるまでもなく、あたしにはわかった。
大好きな香水の匂いがしたから。
……慶太くんだ。
なんでやること一緒なんだろうね。
慶太くんも遠回りしたんだ。
「大丈夫だった?ごめんね」
慶太くんの優しい声。
あたし、途端に泣きそうになった。
だから会いたくなかった。
「芙祐ちゃんも頭髪検査の呼び出し行かなかったの?」
こくりとうなずくと、
「……行こ?これも行かなかったら多分やばいよ」
行こっか、って手を差し出されるわけもない。
慶太くんのその笑顔はもう、営業スマイルなんだよね?
「うん。行く」
慶太くんはすたすたとあたしの前を歩いていく。
もう歩幅が合うこともない。
あたしとよく似た髪色。
大好きな大きい背中。
にじむ。
ゆがむ。
見えなくなった。
ポタリ。
廊下に1滴。
涙っていつになったら枯れるんだろう。
手の甲で涙をぬぐいながら、踵を返した。
教室に戻ろう。
……どうなってもいいや。
生徒指導室には行かない。
保健室前の廊下を通った方が生徒指導室に近いし、
普通はそっちを通る。
……鉢合わせしたくない。
いや、どうせ
指導室で会うんだけど。
うん、でも。
遠回りに決めた。
まっすぐ歩いて、ここを左……
「わっ」
曲がり角で、誰かにぶつかった。
「ごめんなさ……」
顔を上げるまでもなく、あたしにはわかった。
大好きな香水の匂いがしたから。
……慶太くんだ。
なんでやること一緒なんだろうね。
慶太くんも遠回りしたんだ。
「大丈夫だった?ごめんね」
慶太くんの優しい声。
あたし、途端に泣きそうになった。
だから会いたくなかった。
「芙祐ちゃんも頭髪検査の呼び出し行かなかったの?」
こくりとうなずくと、
「……行こ?これも行かなかったら多分やばいよ」
行こっか、って手を差し出されるわけもない。
慶太くんのその笑顔はもう、営業スマイルなんだよね?
「うん。行く」
慶太くんはすたすたとあたしの前を歩いていく。
もう歩幅が合うこともない。
あたしとよく似た髪色。
大好きな大きい背中。
にじむ。
ゆがむ。
見えなくなった。
ポタリ。
廊下に1滴。
涙っていつになったら枯れるんだろう。
手の甲で涙をぬぐいながら、踵を返した。
教室に戻ろう。
……どうなってもいいや。
生徒指導室には行かない。