【完】ぎゅっとしててね?
君へのラブレター
夏が来た。
ていうか6月の時点で夏だったけど。
7月も後半の今、超夏。
サッカー部も野球部も黒すぎて、
髪と顔の境目わかんない。
まぁそれは言い過ぎだけど。
この夏、原点に戻った。
頭の中真っ白にしてね。
放課後は、
勉強、勉強、また勉強。
シャーペンを置いて、
お茶を一口飲んだら。
「無人島に行くなら何持っていく?」
勉強に疲れ果てた藍ちゃん、
口が暇だったんだと思う。
超つまんないこと言い出した。
「うん。考えとくね」
あたし流しといた。
「お二人~また勉強?色気なーい!」
リコはね、私立の推薦組。
だからあんまり勉強してない。
暇を持て余して
あたしに新しい出会いを提供してくれようとする。
いらないって何度も言ってるのに。
合コンとかデートとか
色んなお誘いもらったけど
ぜーんぶ断った。
あたし、今。
一人しか見えてない。
ひとりでいたら、
答えはあっけないほど簡単にでた。
「芙祐変わったね」
「なんか芙祐らしくなぁーい」
藍は今のあたしをほめてくれる。
リコは今のあたしをつまんないっていう。
「片思いってちょっと楽しいかも」
かっこいい姿をみれたとか、そういうのじゃないけど。
優しくされたとか、そういうのでもないけど。
もっと地味。
だけど楽しい。
びっくりだけど、
ちょっと視界に入るだけで
幸せだったりする。
その現象はね、
あのひとじゃないと起きないみたい。
あれ?
よく考えたら片思いって、
初めてのケーケン。
好きな人のこと、
みんなこんな風に毎日想ってるのかな。